伝えたい気持ちを大切に

 理学部情報学科 平成十一年卒 浜田 佐知子

  私が、特別支援教育に関わるなかで、いつも大切にしていること、それは『子どもの伝えたいという気持ちを受けとめること』です。

 最初に勤務した特別支援学校は、病気の治療をしている子どもたちが通う学校でした。うつ病や摂食障害などの病気を抱えながら学校に通う子どもたち。心の中に秘めている思いを本当は伝えたいのだけれど、言葉に出すことができず飲み込んでしまう子どもたちが多くいました。現在勤務している特別支援学校は、知的障がいの子どもたちが通う学校です。障害の程度は、重度から軽度までさまざまです。ここには、言葉を発することができない子どもたちがいます。どちらの学校にも共通して思いを伝えることが苦手な子どもたちがいます。「これが欲しい」、「それは苦手です」、「休憩したい」などの要望の気持ち、「どれくらいやれば終わるのかな」「どこでやるのかな」など不安な気持ち、それ以外にも自分が感じた嬉しい気持ちやつらい気持ち、ぶつけたい気持ちなど、心の中にある様々な気持ちを周りの人に聞いてもらうことは、すごく大切なことなのではないでしょうか。

特別支援教育では、個に応じた取り組みを大切にしています。一人ひとりの子どもが、どのような環境であれば自分の思いを伝えることができるのか、日々、私自身が子どもたちから学びながら、チャレンジを繰り返しています。その子が自分の思いを伝えやすい手段はどのような形なのかを考え、絵カード、ジェスチャー、筆記、交換日記、iPadなどのICT機器などを活用します。周りの環境については、静かな場所がよいのか、それとも音楽がかかっている方がよいのか、壁などに刺激物が少ないほうがよいのか、大勢の中でも伝えることができるのか、少人数の場合は向かい合うのがよいのか、横に座るのがよいのかなど子どもに合う場所を探します。食事前の方が話しやすいのか、朝がよいのか。夕方がよいのか、時間についても気をつけます。手段、場所、時間を考えて、少しずつ子どもの負担にならないように様子をよく観察しながら、その子の思いの出やすい環境を探っていきます。保護者の方を含む先輩方が実践している様子、様々な研修会、書籍などから学んだことを実際の現場で試します。うまくいくこともあれば、もちろんうまくいかないこともあります。それでも、子どもの伝えたい気持ちを受け止めることができて、それが子どもの笑顔に結びつくとき、私は本当に幸せな気持ちになることができます。いつも子どもたちからたくさんのエネルギーをもらって、一人ひとりに合わせた教材を作り、試す日々です。それが今の私の生きがいとなっています。

 最後に、個に合わせた支援について、平等ではなく公平である支援について、わかりやすいイラストがありましたので、引用させていただきました。

 

http://indianfunnypicture.com/img/2013/01/Equality-Doesnt-Means-Justice-Facebook-Pics.jpg より引用